『業界の先駆者として。自慢したくてたまらないものを作ります』
紬・革細工職人 川畑 裕徳さん(奄美市名瀬)
奄美市名瀬市街地の中心部にある大島紬の老舗、川畑呉服店。その一角にあるのが「紬レザーかすり」です。
奄美伝統の大島紬は工程の複雑さや染色の技術など知れば知るほど奥深いものですが、実は若者の着物離れも相まって奄美での紬自体の生産量が下がっています。
まずは若者に紬を知ってもらい、魅力を広めていきたいと『大島紬×本革』の製品を製造・販売しているのが店主の川畑 裕徳(かわばた ひろのり)さん。これまで数々の工芸品コンテストに出品し受賞歴も多数。そんな川畑さんの職場にお邪魔してきました。
(ショーケースには既製の小物が並びます)
――川畑さん、よろしくお願いします! かっこいい商品が並んでいますね。昔から大島紬と革細工をかけ合わせた製品を作ろうと思っていたんですか?
(川畑)
ありがとうございます。呉服屋の息子として、大島紬の業界がどんどん衰退してきたのを目の当たりにしてきました。だから昔は継ぐ気なんて全くなくて。バイクで日本一周したり海外に行ったりしていたんですよ。
オーストラリアに住んでいた時にアボリジニの伝統の楽器と、現代の楽器を掛け合わせた音楽を聴いて、古いものと新しいもののコラボって凄いなと感動しました。それで趣味の革細工と大島紬をかけ合わせてみたいと思い、帰ってきました。
(市街地の中心地に、伝統を引き継ぎ未来を切り開く「かすり」店舗があります)
――破天荒・・・っ! 奄美に帰ってきたときのことを教えてください。
(川畑)
家業の呉服店の一角を借りて、早速小物を作り始めました。
友達の財布を作ったりして、その友達がお客さんを紹介してくれて、何年もかけて少しずつ売れるようになってきました。
――ということは、始めから順風満帆ではなかったんですか?
(川畑)
そうですよ。特にキツかったのは仕事を始めて3・4年目あたり。なかなか売れなくて、本当にこのまま続けていいのかなってずっと思っていました。
――こういってはなんですが、よく続けてこられましたね。
心が折れそう・・・というか、何回も心が折れましたね(笑)。
(川畑)
お金が無く、友達の土木工事現場の作業を手伝ったりしていました。
でもその辛い期間があったおかげで製品づくりや接客のことを勉強できたし、
2010年に大島地域特産品コンクールで表彰されたあたりから問い合わせも増えてきました。
――表彰されるような製品が作れるってすごいですね。製作で特に心がけていることは?
(川畑)
お客さんからしっかり話を聞いて、一つ一つ手作りすること。そして友達に自慢したくなるような製品を作ること・・・かな。
――どんな時にこのお仕事のやりがいを感じますか?
(川畑)
製品のリペアも受けていて、糸、紬、金具なんかを交換するんですが、がんばって作った製品が長いこと旅をして帰ってきてくれたみたいで嬉しいんですよね。
リペア後に納品した時の、お客さんの喜ぶ表情を見られるのも嬉しいですよ。
――お客さんへのメッセージをお願いします。
(川畑)
まだまだ修行中ですが、紬小物製品の先駆者として業界を引っ張っているつもりで仕事しています。僕の製品を入口に「大島紬っていいな」って思ってもらえたら最高です。
『友達に自慢したくなるような物を作る』という言葉が印象的でした。
お客さんとの会話を大切に、お客さんの立場に立ったモノづくりをしてきたからこその言葉で、商品が口コミで広まっていく原動力なんだろうと感じました。
川畑さん、これからも大島紬を引っ張っていってください!ありがっさまりょうた~!